新国立小劇場「効率学のススメ」を観てきた

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 イギリスの新進作家の書き下ろしで,本邦ではなく世界初演という謳い文句の作品だ。安定した商業演劇も悪くないが、評価の定まっていない新しい作品にも触れることで多少なりとも呆けの進行が遅くなるかと期待して、そういう作品にも足を運ぶようにしている。
 確かに周囲の壁をスクリーンにして画像を放映するとか、舞台を四方から見るようにした設営とか、新しい工夫は見られた。またストーリー的にも、研究室の「効率」をチェックするために派遣されたケンの指示が、模造紙にその日の自分の行動を図示していくこととかでビジュアル的に工夫されたものになっていて、宮本裕子や中嶋しゅうの手堅い演技もあって、舞台全体の雰囲気は悪くなかった。
 しかしそれらが効果を上げたのかというとなかなか微妙だ。特に正面がないことによって後ろ向きに聞く台詞は良く聞き取れないことがあったし、動作も後ろ向きのため見えないこともあった。こういう欠点を補うだけの効果が四方から観るという舞台にあったのだろうか。
 特にケンの下した結論が「大変無駄の多い職場であるが、その無駄が今回の放射能障害の治療法に関わる画期的な発見につながったのではないか」というのは当然すぎてで面白くないし、その結論に行く前に、行動記録を模造紙に記入するシーンに結構時間をとったわけだから、その模造紙を使って確かにこの動きとか、研究室の配置が無駄だと登場人物や観客を納得させないと「効率」マンのケンの存在理由が無くなってしまう。少なくとも最初のところでコーヒー・メーカーに関するエピソードを挟んだわけだから、コーヒーの淹れ方だけでも尤もらしいプランを提示するべきだった。
 夏目漱石の「現代日本の開花」を挙げるまでもなく、人類の歴史はいかに楽をするか(合理化するか)という形で進歩し続けたわけだから、この結論では当然すぎるし、またこの劇のケンでは「コストカッター」としての成功者には全然見えず、単に対人関係が巧く結べないむしろ「負け組」にしか見えないから、ケンの発言に説得力が感じられない。
 つまりこの劇はケンをアクの強い「コストカッター」の成功者として描いて「効率学」の素晴らしさをかなり徹底的に描くというコメディとして成立させないといけなかったのではないか。そうすることによってのみ効率だけでは掬えない、人間の「何か」を多少なりとも絡め取れたように思う。

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